口腔粘膜疾患
口腔粘膜疾患について
口腔粘膜は、舌、歯肉、頬、口唇、口蓋などを覆っている軟組織です。この粘膜に発生する病気を総称して口腔粘膜疾患と呼んでいます。口腔粘膜疾患は、口腔粘膜に限局して現れる病変の他に、皮膚疾患と関連のある病変、内蔵疾患などの全身疾患の部分症状として現れる病変もあります。ウイルスや細菌などの局所感染症、自己免疫疾患、薬物・金属アレルギー、色素沈着、白板症などの前癌病変、など非常に多くの病変があり極めて多彩です。
病変の形態は、水疱、びらん、潰瘍を形成するものがあり、また赤、白、黒と様々な色を示します。これらの形態や色調は、時期により変化したり、混在したりする場合も多く診断を困難にしています。このため診断には、いままでの病気の経過、発症状況、皮膚および全身状態との関連を知ることが重要です。必要に応じて、血液検査や病変の一部を取って病理組織学検査を行ったり、アレルギー検査を行うことがあります。
2017年WHO新分類で、これまでの前癌病変及び前癌状態と呼ばれていたものを包括して、「口腔潜在的悪性疾患」として記載されました。これら疾患名を表にします。
紅板症 | 紅板白板症 |
白板症 | 口腔粘膜下線維症 |
先天性角化不全症 | 無煙タバコ角化症 |
リバーススモーキングに関連した口蓋病変 | 慢性カンジダ症 |
扁平苔癬 | 円板状エリテマトーデス |
梅毒性舌炎 | 日光角化症(口唇のみ) |
疾患特有の症状がとらえにくく、時には悪性腫瘍の初期症状や難治性疾患であったりすることもあり、口腔内に変化を見つけたら早目に相談してください。
これらの口腔潜在的悪性疾患のうち当医院でのケースの一部を紹介します。
1.白板症
WHOの診断基準では、口腔粘膜に生じた摩擦によって、除去出来ない白色の板状、または斑状の病変で、他の疾患に分類出来ないものと定義されている。均一型と不均一型があり、均一型で3%、不均一型で20%の頻度で悪性化の報告があり、経過観察に注意が必要になります。
2.紅板症
ビロード様の鮮紅色を呈する平坦な病変に対する臨床診断名で、白板症に比べて、癌化率も高く(40〜50%)、口腔底、頬粘膜、舌に好発します。
>>紅板症症例写真
3.扁平苔癬
発赤、ビラン、潰瘍を併うレース状、網状の白色病変で原因不明の難治性慢性炎症性疾患です。好発部位は頬粘膜、舌、歯周で無症状で推移するものがありますが、0.4〜5.3%の頻度で、悪性化の報告があります。
4.口腔カンジダ症
Candida albicansを主とする真菌(カビ)感染症で、口腔粘膜に白色病変として生じる白板症や扁平苔癬と異なり、白色の偽膜が擦過することで剥離出来ます。舌、頬粘膜に好発し、原因は唾液分泌低下、清掃不良、抗生物質による菌交代現象、全身状態の悪化などです。